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視覚障害者就労相談人材バンク ~私たちの就労経験を伝える~

職務変更検討分科会が開催されました。

 8月29日に職務変更検討分科会が開催され、見えづらさが変化していく中でどのように就労継続をしていくかについて活発な意見交換が行われました。詳細は以下のとおりです。

【職務変更検討分科会 実施報告書】

1. 日時・場所
 日時  2020年8月29日(土曜)13時30分~16時30分
 場所  Zoomによるオンライン開催

2. 参加人数  17名

3. スケジュール
 13時30分 開会の挨拶・連絡事項・参加者自己紹介
 14時00分 事例紹介・質疑応答 西本・小林・吉川
 15時05分 休憩
 15時15分 全体での質疑応答・意見交換
 16時20分 まとめ・閉会の挨拶
 16時30分 終了(以降16時50分までフリータイム)

4. 内容
◆事例紹介
①西本
 視覚の障害が悪化していくにしたがって変化してきた職務の内容と、上司・人事・産業医などと話し合いながら支援してきてもらった内容などについて発表。

京都の計測機器メーカーで働く。
2000年ごろから眼の中心部分にゆがみを生じる。
2009年、病気が網膜色素変性症の一種であることがわかる。
眼の状態が悪化してきたため、ソフトのプログラミングテストからソフト仕様の検討・まとめを行うようになる。
2014年製品の部品登録・管理や文書の管理を行うようになる。
PCTalkerと拡大鏡を導入して勤務するようになる。
勤務形態は、夕方の暗くなるのを考慮して、7時間の短時間勤務、30分繰り上げ勤務を行う。
2015年から週3日間の在宅勤務を行うようになる。
2016年に会社の人事・上司・産業医・京都ライトハウスとで話し合ってもらった結果、通勤路の歩行トレーニングを行うようになる。また、点字のトレーニングやiPhoneのトレーニングも併せて行ってもらうようにした。
その後通勤路の路側帯(歩道)の白線を塗りなおしてもらうように働きかけてもらったり、エレベータの改修時には音声で回数を言うような機能をつけてもらったり点字シールをはってもらったりもした。
昨年・今年と上司が変わったり場所が移動したりもしたが、その都度、話し合いを行って今までと同じ業務を続けられている。

Q1. 上司・人事・産業医のどの方に最初に相談したか。
 A. 先ず上司に相談。上司から人事や産業医に伝えてもらい、話し合いの場を持った。

Q2. どのようなサポートを依頼したか。
 A.具体的にどこをどうすればよいかを相談して伝えた。

②小林
 障害履歴に対応した大学図書館での業務の変遷と、現在の職場環境、心がけていることなどを発表。

大学職員として職についてから34年目になるが、視覚障害による職務を変更してきたという経験の感覚はあまりない。
最初の3年間は教務部であったが、その後の30年を図書館司書職員として勤務し、現在も継続している。
障害の進行にあまり関係なくカウンターでの利用者サービス部門から図書館の経営・管理部門へ途中担当の変更があったが、変更時はまだサービス部門の業務ができる状態であった。
障害者手帳2級を取得した30代後半に、職場の人事部へ業務上の配慮を要望し、承諾してもらい、一部の業務を免除。
PC画面の文字が読めなくなった時点で、改めて人事部へ業務上の配慮や役職事態を申し入れたが、産業医との相談、訓練施設への出張、音声パソコンソフトなどの業務上に必要な補装具を公費購入してもらうなどの支援をいただき、役職付でそのままの業務を継続。
以後、定期的に産業医との面談等により職務に必要な配慮を要求し、ほぼ聞き入れていただいている。
同じ部署には、メンタル面や身体面で障害を抱えたまま仕事を継続している職員が多く、私も含めお互いを理解し、業務を補い助けあっている。
職場でのより良いコミュニケーションを図るために、言語情報や聴覚情報だけではなく常にしぐさや態度、表情などの視覚情報を意識して相手に接している。

Q1. 図書館業務のサービス部門から管理部門への変更の過程で人事部とどのように交渉してきたか。
 A. 障害により管理部門へ変更したのではないが、障害の進行段階に応じた職務上役立つ情報を職場の産業医、眼科医師、福祉事業所のスタッフからアドバイスをいただき、障害状況に合わせた職務遂行に最適な環境、設備や訓練を人事へ要求してきて、受け入れてもらえた。産業医からは視覚障害をもつ職員が働いていることを他の教職員や学生に見てもらい、今後同様の障害をもつ職員や学生を受け入れた場合にどのような配慮や援助が必要になるかを示してもらいたいとの職務への助言をいただいた。

③吉川
 支援機器の導入と訓練を経て職場復帰した経緯と、周囲の協力を得ながら視覚障害者としての特性を活かして業務を拡大してきた事例などを発表。

12年前に視覚障害1級。現在は、両眼手動弁・超ロービジョン。
オムロン株式会社・知的財産センタ勤務。以前は製造業向けの装置の技術開発・商品開発・技術企画に従事。
事業企画への転属を契機に、視力低下に対応するために3ヶ月間休暇を取得。
視覚障害者となって復職後は技術者の経験を活かして知的財産の管理業務に従事。拡大読書器・音声読上げソフト(JAWS)を使用。図面等の読上げや社内外への移動には周囲の支援が必要。
3年前から新入社員等への知財関連の社内教育も担当。受講生との対話形式での講義に工夫。
定年後は役付常勤嘱託として管理職のサポートも担当。
「せっかく視覚障害者になったのだから」、5年前から仕事の一部として働く視覚障害者の支援に取組む。京視協職業部協力員として「目の見えない・見えにくい人の仕事サロン」を企画・運営。京視協相談支援係との連携で働く中途視覚障害者の懇親会「ほっとバー」を企画・運営。
社内のダイバーシティ拡大に向けて障害者の活躍を支援。ユーザビリティチームとの連携で社内外向けサイトの情報アクセシビリティの検証・改善。
インクルーシブデザインの社内展開。視覚障害者の移動支援技術の共同開発に参加。

Q1. 業務のイメージをもって訓練を始めたのか、訓練をするなかで業務のイメージをもつようになったのか。
 A. スクリーンリーダの操作を身につければ自らのスキルや経験から考えてこのような業務ができるというイメージをもって自習を始めた。

Q2. 業務の拡大はどのようにして行っていったか。
 A. 自らの状況の情報発信と人脈の活用を通じてきっかけをつくっていった。

◆質疑応答・意見交換
①会社からの不当な圧力の有無について
・普段は表面には出し難い各自の経験を交換。
・復職に際して会社と困難な交渉を重ねた例や、業務に関して不条理な扱いや不利益を強要されたことはなくとも、障害者となった時点で処遇を大きく落とされたり、長期間配点がなくキャリアアップのコースから自然に外されるなど、順調な復職事例に見えてもそれぞれに厳しい葛藤があったことが語られた。
・あきらめず意思を示して会社に自らの情報を出して理解を求めていくこと、また、信念を持って自らの能力開発にのぞむことが大切。

②障害者の法定雇用率の達成度について
・大企業では特例子会社の設立によって達成しているところもある一方で、多くの中小企業では達成できていない。
・特に視覚障害者の雇用率は低く、行政への働きかけが必要。

③合理的配慮の変化や多様性について
・現在の新型コロナ対応最優先の勤務体制のなか、テレワークに取り残される事例もある。
・当事者で実態を共有し、海外の事例も参照しながら課題を整理していくことが必要。

5. 分科会プランニングファシリテーター振り返り
 今回、PFの3名も自宅からZoomで接続するという方法でのオンライン開催であり、円滑なコミュニケーションがとれるか懸念されたが、参加者・スタッフの方々のご協力により大きな支障なく本分科会をおこなうことができた。
参加者間で就労経歴を交換し、障害状況や見え方が似通っていても、先天性や不慮の事故による若年からの障害、業種、業務実績などにより就労継続のための苦労や職場での現状の置かれている状況が様々で異なっていることが理解でき、今後の就労のあり方を考えるうえでたいへん勉強になった。
また、業務継続の上で自分にとってこれだけは他人に負けないといえるスキルを今からでも身に着けておくことが必要だと感じた。
全体での質疑応答・意見交換では、参加者の信頼関係のもと本音の話が交わされ、情報交換だけでなくメンバー間の交流を深める分科会の目的も達成できたと言える。
コロナ禍のなか、今後の分科会の在り方を議論していく必要はあるが、実際に集まっての分科会をぜひ行いたい。
また、今回話し合った内容を企業の方へも伝えていく方策を検討していきたい。

以上
作成:職務変更検討部会プランニングファシリテーター
   西本・小林・吉川

◆事務局スタッフからの一言
 今回の職務変更検討分科会もPFさんのご尽力によりオンライン形式で無事に開催出来ました。当日は参加者の自己紹介に続き、前半はPFお三方からの事例発表&質問タイムでした。
この職務変更検討部会で取り扱う内容は、晴眼・弱視として入社し仕事を続けて行く中で、見え方に異変を感じる中途視覚障害者には避けて通れない内容かと思います。
自分の見え方の変化に対応しながら仕事内容を変更し、就労をいかに継続して行くかという事例でした。
PF各々のお話から思ったのは、キーワードは上司・人事・産業医・そして訓練施設の存在かと感じました。
そこには当然ご本人の就労継続の強い思い、並びに相当な努力が存在することが前提ですが、上司や人事からの新しい職務の提案、もしくはご本人からの提案といったプロセスを経て現在の職務につながっておられると思いました。
もちろんご本人の職場での経験値というものも重要なことと感じました。
後半のフリーディスカッションタイムでは、参加者さんからのあるご質問をきっかけに、表現が難しいのですが、参加者の皆さんから今の仕事を遂行するに至ったご苦労話とでも言いますか、いわゆる「本音トーク」が炸裂しました。
分科会でしか聞けない内容の数々に「そのような話が聞けて良かった」という本音のコメントも数多くあり、分科会の目的の1つでもあるメンバーさん同士の交流といった点でも大変有意義な時間となりました。
事務局としては、職務変更検討分科会での事例について、視覚障害当事者には当然ですが、企業関係者にも広く広報の上、企業側の理解があれば、社員が視覚障害者になっても、また視力が低下しても十分な戦力になるのみでなく、加えて新しい職域の発掘にもつながる、そういったことを知ってもらいたいと思いました。
今回の分科会では、今後開催を予定している合理的配慮検討分科会にもつながる内容もあり、前回のキャリアアアップ・スキルアップ検討分科会同様、大変素敵な分科会となりました!
今後の各分科会の開催が待ち遠しいです!